【謎の呪文】オーオタがレビューに使う「S/N 階調感 解像感 分解能 」を考察
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今回はオーオタが使う「謎の言葉」について考えます。
ちょっと長くなったので、お時間ある時にどうぞ!
さて、まずは以下をご覧ください。
- S/Nの良さが際立ち、ノイズフロアも極めて低い。
- 中低域の足腰がどっしりと安定していて、バネも鋭い。フットワークはとても軽やかだ。
- 階調感はきめ細かく、色合いも鮮やかに出してくる。
- 情報の密度が極めて濃厚。
- 音場がより一層広がり、情報量が増えて描き込みも緻密さを増す。
- チャンネルセパレーションは驚くほど明瞭(めいりょう)になり、楽器の定位がビシッと定まるとともに、音色の鮮やかさが一段と引き立ってくる。
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/1505/26/news149_3.htmlより引用
これはAK380のレビューから引用したものです。
もしも、これを読んで意味が分かるのであれば、あなたは立派なオーオタです。
「は?」となった方はまだ修行が足りませんね。笑
オーディオレビューには謎の言葉が多く登場します。
これは記事を書いた方の責任ではなく、「音を表す言葉」がもともと少ないことが原因なのです。
音や匂いといった「非視覚情報」に関する語彙は、視覚情報に比べて圧倒的に少ないんですね。
たぶん、非視覚情報というのは、生きていく上で、伝える重要性が低いからかもしれません。
「匂い」を例に考えてみる
匂いを直接表現する言葉は、基本的に「いい匂い」と「悪い匂い(くさい)」しかありません。それ以外は、別のものに例えて表現するしかないのです。
バラの香りやラベンダーの香りといった具合ですね。しかし、「では、バラとラベンダーの香りはどう違いますか?」と質問されると、返答は非常に複雑になるはずです。
これは表現するための言葉がないからに他なりません。
ただし、匂いに関しては「味覚」と深いつながりがあるので、甘い匂いとか、すっぱい匂いという概念が成立します。これによって、相手とイメージを共有できるのです。
問題は「音」。
音の場合はご想像の通り、もっと「やっかいなこと」になります。
音を表現する言葉は基本的に「大小」「遠近」「高低」しか存在しません。
しかし、オーディオのレビューで「大きな音がしました」「高い音がしました」ではお話になりませんし、ギターの音を聴いて「まるでギターが鳴っているようだ」と例えても意味がありません。(まぁ、どんなレビューも突き詰めれば、これに似たことを言っていますが笑)
そこで困ったオーディオオタクたちが考えだしたのが、音を視覚情報に置き換えるという手段です。
上の引用例でいえば、「S/N」「階調感」「情報量」「定位」といったワードです。この他に有名なのは「解像度(感)」「分解能」などがあるでしょうか。
見て頂いて分かる通り、これらのワードはS/Nをのぞく全てが音に関する用語ではありません。
ここでちょっとS/Nについて補足
S/Nとは、シグナルに対するノイズの量を数値で可視化したものです。どんな分野でもオタクは数字スペックが大好きですから、そんな要望に答えるためにオーディオ業界が考えたのでしょう。
実はあまり意味のないものです。
S/Nの測定は無信号時に行われるので、音楽を鳴らしている間のノイズ量ではありません。(音楽自体がノイズですから当然ですね笑)
だから間違っても音楽を聴きながら「S/N比が高いねぇ」なんていうのは止めておきましょう。
ということで、S/Nというものはプレーヤーに繋いだ際に、無音時にどれくらいノイズが出るかの参考になる数値です。その程度のものだと知っておきましょう。(これを気にする人はアナログレコードなんて聴けません)
階調感、解像度、分解能って何?
オーオタは、この3つのワードをどこから輸入してきたんでしょうかね?
どれもオーディオ用語ではないので、起源があるはずです。
分かる人はすぐ分かるでしょうが、恐らく「カメラ」だと思います。
実はこの3つの言葉、カメラオタクの人が好んで使う言葉なんですね。
カメラ(レンズ)において、色の濃淡や細かい色合いの違いを表現できたとき「階調表現が高い」と言います。同様に、非常に細かい部分まで撮影できることを「解像度が高い」あるいは「分解能が高い」と表現するのです。
このいかにもオタクが好みそうな言い回しが、オーディオにも輸入されたんですね。というかカメラオタクとオーディオオタクが重複しているのかもしれません。
音には音階があるので階調表現という言葉を使えなくもないですが、音楽において「階調が正しい」というのはどちらかと言えば演奏者の話だと思うので、音質の話としてはどうなんでしょう?
上の引用では、はっきり「色合い」という言葉まで出てきますね笑。このライターの方はカメラもお好きなのでしょう。
それから、カメラ性能にはdpiで表現される解像度という数値がありますが、当然オーディオにはそんな数値はありませんので、解像度ではなく解像「感」になります。解像度が高い音というのは誤用な気がしなくもないです。(私がもし過去レビューで使っていたら御免なさい)
まとめ
ということで、ぐだぐだと話ましたが、解像感と分解能とチャンネルセパレーションという言葉は、同じことを指していると考えて良さそうです。チャンネルセパレーションが高い、つまり左右の音の分離が良いというのは、音のディテールを表現できている=解像感が高いということですからね。
まぁどんな製品のレビューでも「解像感が高い音」と書くと「お前、そればっかだな!」って言われちゃいますからね。苦肉の策で使っているのでしょう。
本当は「音場」や「定位」についても考察したかったんですが長くなってしまったので、またいつか要望があれば書きます笑!
(本記事は、決してオーディオレビューを馬鹿にしたい意図で書いたわけではなく、むしろ自分がレビューを書く上で困った結果、考えたことのまとめです。)